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あなたの相続人のために
相続手続きは被相続人の死後に法定相続人や受遺者が行うものですが、被相続人の急逝や準備のないままの逝去の場合、どのような資産がどこになるのかがわからず右往左往しがちです。ましてや海外に資産がある場合は言葉の問題があるうえ、相続手続きも日本と異なることが多くあります。また、「争族」と呼ばれるような相続人間の相続をめぐる争いが生じる可能性もあります。
そうした事態にならないようにするには、資産を残す方(被相続人)が生前から準備をしておくことが重要です。最近では「終活」の一環でエンディングノートを作成される方が増えています。このエンディングノートに財産の内容を記載しておくだけでも遺族による相続財産調査の手間や時間、費用を軽減することができるでしょう。
しかし、エンディングノートには法的効力があるわけではありませんので、相続に関して自身の意思を死後に確実に反映させたい場合は遺言書を作成しておく必要があります。
遺言
タイの相続では日本同様、遺言がある場合は遺言が優先されます。
遺言書がない場合、遺言により相続の指定がなされていない財産がある場合、遺言の全部または一部が有効でない場合、法定相続割合に基づいて分割されることになります。
第1620条
被相続人が遺言を作成していない場合、または遺言が有効でない場合、被相続人の法定相続人が法律に基づいて相続財産を分割する。
被相続人が遺言を作成している場合において、相続財産の一部のみが相続の指定をされているとき、または相続財産の一部のみが有効であるとき、遺言で指定されていない部分、または遺言が有効ではない部分については、法律に基づいて法定相続人が分割する。
遺言作成のメリット
遺言書を作成するメリットは以下のような点が考えられます。
- 遺言者の死後の意思を生前に準備できる
- 法定相続分と異なる相続方法を指定できる
- 法定相続人ではない人への遺贈を指定できる
- 相続財産を明示できる
- 相続執行者を指定できる
財産目録としての価値
仮に法定相続人に法定相続通りに相続させたい場合でも遺言書を作成しておくことは財産目録として貴重な証拠となります。
特に海外に資産を保有している場合、どの国に、どのような資産を、どの程度保有しているのかを記録に残しておかないと死後に困るのは相続人です。
相続人が不明なため放置されていたコンドミニアムが管理費滞納により競売で売却されたという事例もあります。この事例では、売却代金から管理費、遅延損害金、裁判等に要した費用を控除後も残金があったものの相続人に引き渡すこともできない状態となっています。
遺言の方式
タイには以下の5つの遺言の方式があります。
- 普通証書遺言(自筆、印刷のどちらでもよいが、自署および証人2人が必要)
- 自筆証書遺言(すべてを自筆。証人は不要)
- 行政証書遺言(市役所、郡役所で作成。証人2名が必要)
- 秘密証書遺言(遺言書を作成して封印し、市役所、郡役所に届け出。証人2名が必要)
- 口述遺言(死亡間近、伝染病感染、戦争等の特別の事情がある場合に可能。証人2名が必要、かつ証人は市役所、郡役所に届け出)
遺言の無効
遺言または遺言の内容が遺言の方式に定める要件に基づかない場合は無効となります。
また、遺言者に代わって遺言書を筆録した者および証人(それらの配偶者を含む)はその遺言において受遺者となることはできません。
第1705条
作成した遺言または遺言の内容が第1652条(未成年後見人への遺贈禁止)、第1653条(遺言の筆録者・証人への遺贈禁止)、第1656条(普通証書遺言)、第1657条(自筆証書遺言)、第1658条(行政証書遺言)、第1660条(秘密証書遺言)、第1661条(聾唖者による秘密証書遺言)、第1663条(口述遺言)に抵触する場合は無効とする。
遺言の撤回
遺言者は、作成した遺言書を撤回または内容を変更したい場合、遺言書の破棄、日付の新しい遺言書の作成、抹消線の記載によりその全部または一部を撤回することができます。
第1693条
遺言者は自己の遺言の全部または一部をいつでも撤回することができる。
第1694条
前の遺言の全部または一部を後の遺言により撤回する場合、法律の定めるいずれかの方式により後の遺言を作成したときに効力を生じる。
第1695条
遺言の原本を1部のみ作成した場合、遺言者は故意に破棄または抹消線を引くことにより遺言の全部または一部を撤回することができる。
遺言の原本を複数作成した場合、すべての原本に対して当該行為を行うことにより撤回できる。
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