外国人によるコンドミニアムの相続

 コンドミニアムの所有権者の死亡により相続が発生するケースが増えています。「コンドミニアムの所有権を持つ外国人が死亡した場合、その者の法定相続人である外国人はそのコンドミニアムを相続できるのか?」という点について解説します。

コンドミニアム所有が可能な外国人

 コンドミニアム法第19条は所有権を取得できる外国人を次の通り定めています。

第19条
以下の外国人および法律が外国人とみなす法人はコンドミニアムの専有部分の所有権を取得することができる。
(1)入国管理法により永住許可を取得した外国人
(2)投資奨励法により入国を許可された外国人
(3)土地法第97条および第98条に定める法人(タイ国法により法人登記された法人)
(4)1972年(仏暦2515年)11月24日付革命団布告第281版が外国人とみなす法人で、投資奨励法により投資奨励許可を得た法人
(5)外国人または法律が外国人とみなす法人(外国通貨をタイ国に持ち込んだ場合、外国に居住する者のタイバーツ建て預金口座から引き出した場合、または外国通貨建て預金口座から引き出した場合)

コンドミニアム法

 つまり、同条のいずれかの要件を満たせば外国人でもコンドミニアムの専有部分(ユニット)について所有権を取得できますが、逆にいずれにも該当しない場合は取得できないということになります。コンドミニアムを購入する外国人はそのほとんどが(5)に基づいています。

相続した場合の措置

 一方、同法第19条の7には次のように定められています。

第19条の7
第19条に定める以外の外国人または法律が外国人とみなす法人が法定相続人または受遺者等の地位において相続により専有部分を取得した場合、所有権を取得した日から60日以内に担当官に書面にて報告し、かつ1年以内に売却しなければならない。当該期日までに売却しない場合、第19条の5第4項の定めを準用する。

コンドミニアム法

 つまり、第19条のいずれにも該当しない場合は相続による取得であったとしても売却しなければならないと定めています。

法定相続人の解釈

 ここで、法定相続人は第19条に該当するのか否かという点が問題となります。

 同法を厳格に解釈した場合、自然人である外国人が相続により取得できるのは(1)と(2)のみであるとされています。(5)は購入資金を海外から送金することが前提となっていますので相続はこれに該当しないという解釈です。

 一方で民商法は相続について次のように定めています。

第1599条
死亡した者の財産は相続人が承継する。
相続人は本法またはその他の法律の規定により相続権を喪失する場合がある。

第1600条
本法において、被相続人の相続財産とは被相続人のすべての財産をいい、権利、義務、責任等を含む。ただし、法律または態様により被相続人の一身に属するものはこの限りではない。

民商法

 つまり、タイ人、外国人の別なく相続人は死亡した者(被相続人)の財産を当然に相続することができると解釈されます。

 以上より、外国人である相続人は民商法の定めに基づいて被相続人の第19条(5)に基づく権利を相続することで第19条(5)の外国人とみなされ、売却することなく所有権を保有し続けることができると解釈されています